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何をやるかではなく「何を考えなくていい状態」にするか
「Webが大事なのは分かっているけれど、何から手をつければいいのかわからない…」
「やることが多すぎて、正直、整理しきれない…」
「調べれば調べるほど、かえって迷ってしまう…」
こうした悩みを抱えている中小企業の経営者やビジネスオーナーの方は、少なくないかもしれません。
SEO、SNS、広告、ホームページ改善、ツールの導入、AIの活用など、Webに関する情報は年々増え続けています。どれも重要そうに見える一方で、「何かをやっていない状態」に不安を感じてしまうこともあるでしょう。
ただ、Web施策がうまく進まない原因は、必ずしも知識や努力が足りないからとは限りません。むしろ多いのは、経営者がWebに関する判断を一人で抱え込み続けてしまっているケースです。
この記事では、「何をやるべきか」を増やすのではなく、「何を考えなくていい状態を、どの順番で作っていくか」という視点から、中小企業のためのWeb施策の優先順位を整理していきます。

1.Web施策には「正解」ではなく「整理の軸」が必要
Webサイトの改善や運用を支援する中で、「これはやるべきかどうか」を判断するとき、必ず確認しているポイントがあります。
それが、次の3つです。
要素 | 意味 | 判断のポイント |
Alignment | 経営との整合 | 今の主力商品や経営方針とズレていないか? |
Impact | 成果への近さ | 売上に直結する場所(出口)に近い施策か? |
Sustainability | 続けられるか | 忙しい時でも、無理なく回り続けるか? |
ここでは、これを AIS(アイス) というシンプルな枠組みとして整理します。
この3つすべてを満たしている施策は、中小企業にとって「今、手をつける意味がある施策」である可能性が高いと言えます。逆に、どれか一つでも欠けている場合は、急いで取り組まなくてもよいケースがほとんどです。
次のセクションからは、このAISそれぞれについて、なぜ重要なのか、どんな点を見ればいいのかを、具体的に整理していきます。
A|Alignment:そのWeb施策は「今の経営」と合っているか
Web施策の優先順位を考えるとき、まず確認したいのは「その施策が、今の事業の状況と本当に合っているか」という点です。
Webの世界では新しい手法やトレンドが次々と出てきますが、すべてを取り入れる必要はありません。実際、「効果がありそう」「周りがやっている」という理由だけで始めた施策が、かえって負担になってしまっているケースは少なくありません。
たとえば、問い合わせにつながる導線が整っていない段階で集客に力を入れてしまったり、今いちばん売りたいサービスと関係の薄い情報発信に時間を割いてしまったりすることがあります。
こうした状態では、頑張っているわりに手応えを感じにくく、Webに対して苦手意識だけが残ってしまいがちです。
Alignmentを見るというのは難しい分析をすることではなく、「今、自社として何を一番優先したいのか」「Webでそれを後押しできているか」を確認することです。
Web施策を考える前に、「今の経営と同じ方向を向いているか」を確認することが、優先順位を決める最初の一歩になります。
I|Impact:その施策は「成果」にどれだけ近いか
Alignmentで方向が合っていることを確認したら、次に見るべきなのが「その施策は、成果にどれだけ近いか」という点です。
Web施策というと、新しい集客方法や目に見えやすい施策に意識が向きがちですが、成果に直結しやすいのは、実はもっと地味な部分であることが少なくありません。
たとえば、新しくアクセスを増やすことよりも、すでに見られているページで「何が伝わっていないのか」「どこで迷わせているのか」を見直すほうが、結果として問い合わせや申し込みにつながりやすいケースは多くあります。
相談の現場でも、「SNSを頑張っているのに成果が出ない」という話をよく聞きますが、よく見てみると、受け皿となるページの内容や導線に改善の余地が残っていることがほとんどです。
Impactを見るというのは、「その施策がどれだけ大きそうか」を判断することではありません。「売上や問い合わせに近いところから手をつけているか」「今やっていることは、成果まで何段階あるのか」を意識することです。
中小企業の場合、遠回りな施策よりも、成果に近い一手を確実に積み重ねたほうが、結果的にWebへの負担も少なくなります。優先順位を考えるときは、「目立つ施策かどうか」ではなく、「成果までの距離が短いかどうか」を基準にすることが重要です。
S|Sustainability:その施策は「無理なく続けられるか」
Alignmentで方向が合い、Impactで成果に近いと分かっていても、最後にもう一つ確認しておきたいのが「その施策は、無理なく続けられるか」という点です。
Web施策が途中で止まってしまう原因の多くは、内容そのものではなく、続ける前提が現実的ではなかったことにあります。
たとえば、社長自身が毎回SNSの投稿内容を考えなければ回らない施策や、忙しくなると真っ先に手が止まってしまう運用は、長く続けるのが難しくなりがちです。
始めた直後は気合で回せても、数か月後には負担になり、「やらなければ」という気持ちだけが残ってしまうことも少なくありません。
Sustainabilityを見るというのは、「頑張れるかどうか」を問うことではありません。「忙しい時期でも回るか」「自分が関与しなくても最低限は進むか」といった視点で、その施策の前提を確認することです。
中小企業のWeb施策では、完成度の高い仕組みよりも、多少シンプルでも“止まらない仕組み”のほうが、結果として成果につながりやすくなります。優先順位を決めるときは、その施策が続く理由まで含めて考えることが大切です。
①経営の方向と合っているか、②成果にどれだけ近いか、③無理なく続けられるか。この3つを同時に満たす施策から手をつけることで、Web施策は整理され、迷いにくくなります。
逆に言えば、どれか一つでも欠けている施策は、今すぐ取り組まなくてもよい可能性が高いということです。
2.よくあるWeb施策の優先順位ミス
Web施策について相談を受けていると、特定のパターンでつまずいているケースをよく見かけます。その多くは、施策選びの失敗というよりも、判断の前提が整理されないまま進んでしまったことが原因です。

ミス1: いきなり集客から始めてしまう
SEOやSNS、広告など、目に見えやすい集客施策から手をつけてしまうケースです。
背景には、
まずは人を集めないと意味がない
集客が先だ
といった分かりやすい説明を、そのまま受け入れてしまいやすい状況があります。
しかし、受け皿となるホームページや導線が整っていない状態では、せっかく集めたアクセスも成果につながりにくくなります。
たとえば、「流行っているから」とTikTokを始めてみたものの、実際にはBtoBのニッチな製造業で、意思決定者がほとんどSNSを見ていなかった、というケースもあります。
ミス:2 新しい施策を次々に試してしまう
成果が見えないと、「別の方法のほうがいいのでは」と考え、新しい施策に手を出してしまいがちです。
専門業者や情報発信の中で「今はこれが有効」と言われる施策が次々と出てくるため、切り替え続けてしまうのも無理はありません。
その結果、どれも中途半端になり、改善が積み重ならないまま時間だけが過ぎてしまいます。
たとえば、広告費を月30万円かける前に、問い合わせフォームの入力項目を5つ減らすだけで、成約率が上がっていたかもしれない、というケースです。
ミス3: 続けられない前提で施策を選んでしまう
始める前から「忙しくなったら止まりそう」「自分が関わらないと回らない」施策を選んでしまうのも、よくあるミスです。
「多少無理をしてでもやったほうがいい」と判断してしまい、現実的な運用負荷まで考えきれないまま始めてしまうケースも少なくありません。
続かない施策は、どれだけ魅力的に見えても、結果につながりにくくなります。
こうして見ていくと、これらのミスは「やり方が間違っていた」というよりも、取り組む順番が整理されないまま進んでしまったことによって起きているケースがほとんどだと分かります。
3.どの順番で進めるのが現実的か
ここまでで「考え方は分かったけれど、結局どこから手をつければいいのか」と感じている方もいるかもしれません。中小企業のWeb施策は、理想論ではなく「無理なく前に進める順番」で考えることが大切です。
①ホームページの整理(受け皿を整える)
まず最初に取り組みたいのは、受け皿となるホームページの整理です。誰に向けたサービスなのか、何ができるのか、次に何をしてほしいのか。
この基本が曖昧なままでは、どんな施策も成果につながりにくく、判断の迷いも増えてしまいます。
②既存のページや導線の改善(成果に近い改善)
次に行うべきは、新しい施策を増やすことではなく、既存のページや導線の改善です。
文章の整理や導線の見直しなど、地味な部分ではありますが、成果に近く、負担も比較的少ないため、中小企業にとっては優先度が高い取り組みです。
③集客施策(必要なものだけ選ぶ)
そのうえで、はじめて集客施策を検討します。SEO、SNS、広告のすべてに手を出す必要はなく、AISの観点で最も相性の良いものを一つ選ぶだけで十分です。選択肢を絞ることで、Web施策は一気に管理しやすくなります。
④運用の仕組み化(考えなくていい状態へ)
最後に、運用を仕組み化し、「考えなくても回る状態」に近づけていきます。ツールの活用や外部の力を借りることで、Webは日々の悩みではなく、経営を支える土台になっていきます。
この順番で進めることで、Web施策は無理なく積み重なり、判断に振り回される感覚も少しずつ減っていきます。
4.自分でやるべきこと/任せた方がいいこと
Web施策の優先順位がある程度整理できると、次に悩みやすいのが「どこまでを自分でやるべきか」という点です。すべてを自社で抱えようとすると負担が大きくなりやすく、かといって完全に丸投げするのも不安が残ります。
まず、経営者自身が担うべきなのは、Webの細かな作業ではありません。「何を目的としてWebを使うのか」「今、何を優先したいのか」といった、経営の判断に関わる部分です。
ここは外部に任せることが難しく、経営者自身の意思がはっきりしているほど、Web施策もブレにくくなります。

一方で、具体的な実装や改善、日々の運用といった作業は、必ずしも経営者が自分で行う必要はありません。文章の修正や導線の調整、数値を見ながらの改善などは、第三者の視点が入ったほうが、冷静に進められることも多くあります。
実際、相談を受ける中でも、「自分でやろうとして止まっていた施策が、任せたことで前に進んだ」というケースは少なくありません。
任せたことで作業量が一気に増えたというよりも、毎回判断しなくてよくなり、迷いが減ったことで施策が継続しやすくなった、という変化が起きているケースが多く見られます。
Web施策は、すべてを自分でやるか、すべてを任せるかの二択ではありません。経営の方向を決める部分は自分で担い、作業や運用は任せる。この役割分担ができると、Webは無理なく続く仕組みとして機能し始めます。
5.まとめ|Web施策は「頑張るもの」ではなく「迷わない仕組み」
優先順位の考え方:Web施策は「何をやるか」ではなく、「何を考えなくていい状態を作るか」という視点で整理すると、迷いが減り、進めやすくなります。
AISという判断軸:経営との整合(Alignment)、成果への近さ(Impact)、続けやすさ(Sustainability)。この3つを満たす施策から取り組むことで、無理のないWeb運用が可能になります。
順番を間違えないことが重要:集客の前に受け皿を整え、次に改善、その後に必要な集客施策を選ぶ。この順番を意識するだけで、施策の空回りを防げます。
全部を自分で抱えなくていい:経営の方向を決めるのは経営者の役割ですが、実装や運用は任せることで、判断や負担を減らすことができます。
Webは「頑張り続けるもの」ではない:判断を減らし、仕組みとして回る状態を作ることで、Webは経営を支える土台になっていきます。
大切なのは、「全部やろうとしないこと」。経営の方向と合っているか、成果に近いか、続けられるか。このシンプルな視点で優先順位を考えるだけでも、Web施策はずっと進めやすくなります。
まずは、今やっている施策を一度立ち止まって見直し、「今、本当に必要なことは何か」を整理するところから始めてみてください。小さな整理の積み重ねが、Webを“迷いの種”から“頼れる仕組み”へと変えていきます。
「自社の場合、どこから手をつければいいのか分からない」
「一度、優先順位を整理してほしい」
そんなときは、お気軽にご相談ください。







